けいのブログ

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【語りたい】#3 フラダリとは、フレア団とは何だったのか【ポケスペ考察】

■テキスト版はこちら。要点だけ知りたいという人やスマホの人はこちらをどうぞ。

keypksp.hatenablog.com

 

■この記事はそのテキスト“を元にした”議論(?)を編集したものです。PC推奨。

 

登場人物紹介

けいちゃん:このブログの主。XY編は好きな章の1つなので、ぜひ61巻の発売をみんなで盛り上げたいな。

司会:司会。

 

 

 

ポケスペ史上最悪のボスはフラダリ?

けいちゃん:皆さんにまず、フラダリを考える上で重要なセリフは一つしかないことをお伝えしなければなりません。

ここを押さえておかないと、あっという間に「フラダリの欺瞞のテクニック」に呑み込まれて訳がわからなくなります。

 

司会:大きく出ましたね。

 

けいちゃん:だってフラダリ、あいつやばいですよ。

ある意味ポケスペ史上最悪の悪役です。

 

司会:そこまで言いますか。

 

けいちゃんうん。同時に、改めてまじで日下先生尊敬した。日下先生すごいですよ、こんな悪役を作り上げて。

そこに山本先生のペンの力があることも言わずもがなですが。

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追記:

けいちゃん:ここの発言ですが、Twitterで山本先生と少しやり取りさせていただいたことをきっかけに

 

漫画がどうやってできているのか、は「シナリオ/まんが」という単純な切り分けで語ることはできない

 

という発想に至ったので、消しておきます。

 

結論はポケスペすごい」に改めます。

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フラダリの願い

司会:じゃあ、そのセリフについて教えてください。

 

けいちゃん:ハイ。人の本心って、何でもないところでこそポロッと出るんです。それは56巻#559 ハリマロン、起つ のカルネとの会話、

世界を永遠のものとしてすべての美しさを美しいまま保ちたい。(56巻、p177)

これだけです!

 

司会:…え?これなんですか?

 

けいちゃん:ハイ、これです。で、これだけなんです。

 

 

けいちゃん:で、重要なのは、これが絶対に不可能なことである点なんです。

 

司会:まあそうですよね。この場合だと、形あるものは全ていずれ変わっていきますから、当然ですね。

 

けいちゃん:そう、その通り。で、「これ」を空想に留めておくのであれば全く問題ないんです。

それは言うなればドラ◯もんに頼むようなものであり、時に楽しいフィクションにも昇華し得る。

 

 

けいちゃん:でもこれを実行に移すと結果は2つに1つで、

不可能なので諦める

嘘や誤魔化しを使いまくって「できる(/た)」ように見せかける

しかないんです。

 

司会:あ!もしかしてフラダリって…

 

けいちゃん:そう。後者の道を進んでしまったんですよ、きっと。

 

 

フラダリは駄々っ子?

けいちゃん:改めてですが、「これ」を押さえておかないとフラダリがわからなくなっちゃうんです。

 

けいちゃん:フラダリって要するに、できないことを前にして(周囲を破壊しながら)ジタバタしている人なんです。

だから、他の発言は全てこの「できないこと」を「できる(/た)」と偽装する(強弁する)ための屁理屈なんです。

だからまともに聞いてはいけないし、聞くとたちまち混乱に陥る。

 

司会:え、じゃあ「美しくないものを一掃し、美しいカロスを取り戻す」というフレア団の根幹の考え方も…

 

けいちゃん:実はそこ、二重の意味が重なっていて。ややこしいんですよ…

 

 

否定形は欺瞞のサイン

けいちゃん:まず、“フラダリが言う”「美しくないものを一掃し、美しいカロスを取り戻す」は屁理屈です。

 

けいちゃん:それは、「美しくないもの」を設定してみせることで逆説的に「美しいもの」を定義してみせるという詭弁の一種です。

それを示しているのが、フラダリは「美しい」という言葉は繰り返すけど、ほぼ「美しいもの」の具体例を挙げたことがない。

 

司会:なるほど。でも「ほぼ」ということはつまり、どこかで言ってはいるんですよね?

 

けいちゃん:ハイ。1つはやっぱり冒頭のシーンで、カルネに対し

しかし、美しさの基準とは人それぞれ。

たとえばキミのキャリアの中ではデビュー作での少女の演技がもっとも美しかったとわたしは思うが…(56巻、p176)

 

「若さ」イコール「美しさ」とは限らない、と。

世界を永遠のものとしてすべての美しさを美しいまま保ちたい。

そう願うわたしとは相容れないとその時思ったよ。(56巻、p177)

と言っていて、ここから推測するとフラダリの言う「美しさ」って「変わらない若さ」かなぁって気がします。

 

司会:なるほど。

 

 

けいちゃん:で、話を戻して、でもなんでこれが屁理屈なのかというと、やっぱりそんな「(永遠の)美しさ」は存在しないからなんです。

でも、フラダリの思想ではそれは「あるもの」で、そうすると証明してみせなくてはならない。

 

けいちゃん:で、この時、その存在しないものを「存在する」とするためには「美しくないもの」を定義してみせればいいんです。その「美しくないもの」以外が「美しいもの」なんです、って。

そうすると、(自他共に)「わかった気に」なれる。

 

司会:ふむふむ。

 

けいちゃん:でも、これは具体的に考えてみれば、詭弁であることは簡単にわかる。

ピカチュウ(これは存在するけれど)を定義するのに、「黄色くないポケモンピカチュウではない」という命題では不十分なのは誰だってわかることです。

 

司会:そりゃそうですね。

 

 

けいちゃん:ここすごい重要で、フラダリおよびフレア団の思想で「〜ない」という否定形を含んで語られる思想のほとんどは「欺瞞」を含んでいるんです。

「存在しないもの」を「存在しているかのように見せかける」ためのテクニックにすぎないものばっかりなんです。

 

 

フレア団は「奪う者」たち

けいちゃん:で、そこに当てはまらない異なるテクニックが使用されているのが、“フレア団”の言う方の「美しくないものを一掃し、美しいカロスを取り戻す」なんです。

とはいえ、別に大仰なテクニックが使用されている訳ではなくて、単に暴力を行使するための言い訳です。

 

司会:ありゃりゃ。そうなんですか?

 

けいちゃん:なんでそんなことになっているかと言うと、「最終破壊兵器」を動かすのに色々なものを“非合法的に”調達しなくちゃいけなくて、それの口実を作らなくてはいけなかったから、だけだと私は思うんです。

 

 

けいちゃんフレア団にとって「美」とかは本当はどうでもよくて。

なぜなら、フレア団の存在意義は「最終破壊兵器」を動かすこと以外にない。だから、その思想もまた「『最終破壊兵器』を動かす」に関するもの以外はあり得ないんです。

 

けいちゃん:ちなみに、フレア団が「最終破壊兵器」を動かさなくちゃいけないのは、フラダリの欺瞞の隠蔽のためです。

あとは、フラダリ、フレア団員、外部の協力者たちの「世界をぶっ壊したい」という破滅願望

 

司会:なるほど、どんどん新説が出てきますね…

 

 

けいちゃん:こちらも証拠をあげますね。まず、フレア団員が言う思想における「美」って、別に代替不可能な概念じゃないんです。

特に「力」という言葉で言い換え可能であり、事実そういう言い換えはよく使われている。

 

 

けいちゃん:で、現実にやっていることは全部「資源の強奪」。なぜなら、「最終破壊兵器」を動かさなくちゃいけないから。

フレア団の中心思想って、「美」じゃなくて「奪う」なんです。

じゃあなんでそれでも「美」という言葉を使っているのかと言うと、「高尚に見えるから」とか「ボスが言ってるから言っとくかw」ぐらいですよ、きっと。

 

司会:ずいぶん軽い理由ですね…

 

けいちゃん:「美」ではなく「奪う」が中心思想である証拠はいくらでも見つかるけど、例えばホラ、ある女団員の発言ですが、このように。

われわれフレア団は、

「美しい世界」を取りもどすために必要な力を、

それを行使するためにふさわしい人に「与える」ために、

「奪って」いるの!(57巻、p123)

見てください。結論が「美」じゃなくて「奪う」です。

 

これ、「美」が結論なら、

 

われわれフレア団は、

必要な力を「奪って」、

それをふさわしい人に「与えて」、

「美しい世界」を取りもどすの!

 

って言うはずでしょ?

ちなみに、フラダリはこういう言い方もするけれど、フレア団員はだーれも言わない。

 

司会:え?本当なんですか?

 

けいちゃん:まじで。

 

 

けいちゃん:また、同じ団員のその後のセリフが面白いんです。

だから力なき者から「奪って」でも、

力ある者に「与え」なければ!!そうすれば、美しい世界を取りもどすことができる!!

 

まあ、これは私たちフレア団ボスのお言葉、その受け売りなんだけど……。(57巻、p127、太字は筆者による)

フレア団員にとってこういう考え方は「借り物」で、つまりこれはフレア団の思想ではなく「ボスの思想」であることを示唆していますよね。

フラダリ本人がこういう意図でセリフを言うシーンは簡単に見つかるので割愛。

 

司会:ややこしいなあ…同じ言葉を使うんだったら意味とか意思は統一しておいて、って言いたくなりますね。

 

 

けいちゃん:とどめに、この団員の捨てゼリフ。怖過ぎです。で、「美」とか一文字も出てこない。

子どもたちめ…!その力奪ってやる…!そして…、

苦痛と絶望を…与えてやる…!(57巻、p131)

 

司会:うわ〜。改めて見ると、こわっ!でもその通りで、「美」については一切言ってませんね…

 

 

けいちゃん:こんな感じで、みーんな「奪う」ばっかり。だから、本当にフラダリを除く“フレア団にとって”は「美」はどうでもよくて、「奪う」のみがドグマなんです。

とはいえそれでも例外がいないわけじゃなくて、それはA班(チーム・ア)の幹部、バラ

 

司会:なるほど。バラに注目したことはありませんでしたが、彼女には何かあるかもしれませんね。

 

 

けいちゃん:このように、フラダリもフレア団も嘘ばっかりなんですよ。

タチが悪いのはそれがいっぱいある上に絡み合っていて、それでいて「(ある点において)上手に隠蔽」ばっかしてあるからなんです。

 

 

フラダリは歴史に名を残しそう

司会:ここで一度議論を整理してください。

 

けいちゃん:ハイ。フラダリは

世界を永遠のものとしてすべての美しさを美しいまま保ちたい。(56巻、p177)

という目標を掲げるも、その不可能性に直面した人のはずなんです。

で、普通は不可能性に直面すると人は「諦める」んですが、フラダリはそうしなかった。

 

けいちゃん:でも、やっぱりそれはどうやったって「できないこと」なんです。

そうした時、それでもこの「できないこと」を「できる」とするためには、嘘をつかないといけない、つくしかない。

 

けいちゃんこのメカニズムが、フラダリの全てなんです。これだけなんです。

フレア団は正直、この構造においては「嘘を誤魔化すための装置」に過ぎない、木っ端なもの*1なんです。

そして、そうやって理解すると、やっとフラダリの姿が“実像として”見えてくる。

 

 

司会:すごい話になってきましたね…フラダリ、お前そんな奴だったのか…

 

けいちゃん:そう。でもこれって別に珍しい話じゃないんです。古今東西、大小問わずあらゆる場面で見られる構図です、これって。

で、その最悪の形がファシズム

 

司会:うわ、一気に雲行きの怪しい話になってきましたね…

 

けいちゃん:ハイ。で、その観点から言うと、フラダリって明らかにポケスペポケモンの世界において歴史に残るレベルのファシストなんです。

これが「フラダリ、やばい」「ポケスペ、やばい」の根拠なんです。ポケモンのコミカライズでそんなテーマやるんかい、っていう。

 

 

フラダリの、フレア団の歩み

けいちゃん:とはいえ、ファシズムとか持ち出してきたら皆アレルギーあるから読むのが嫌になるでしょ?「よくわからないけど怖いもの」とか嫌だもんね。

だからこの記事ではその証明はやめて、その考察の過程で私が推測したフレア団の「軌跡」の話をしましょう。

 

知りたい人はこちらの記事をチェック!ちなみに死ぬほど長いぞ。

【ポケスペ考察】フラダリとは、フレア団とは何だったのか - けいのブログ

 

司会:「軌跡」、ということはつまり、時系列ってことですね?

 

けいちゃん:ハイ。時系列に沿って考えることで、思想の変化および、欺瞞の生成がよくわかるようになるはずなんです。

繰り返しますが、これは完全に推測ですよ!

 

 

フレア団のはじまり

けいちゃんフレア団のスタートは、フラダリが

世界を永遠のものとしてすべての美しさを美しいまま保ちたい。(56巻、p177)

を実現したい、と願った時点でしょう。

 

けいちゃん:一見このバカバカしい“妄想”も、

  • カロス王族の末裔、という「特別な立場」
  • ホロキャスターという「最新技術」を開発できるだけの頭脳
  • トレーナーとしての実力
  • 組織をまとめ上げることのできる才能、カリスマ

などの条件が揃ってしまうと、自他共に「もしかしたら、できるかも…?」と思わせるには十分だったかもしれませんね。

 

司会:ですね。その通りです。

 

けいちゃん:で、それは別にいいんです。その失敗と成功の繰り返しで、何か新しい発見を人は得ることができるんですから。だから、

  1. 思って
  2. やってみて
  3. 駄目だったから諦める

で終わっていたら問題はなかったんです。でも、フラダリはきっと諦めきれなかったんです。そうなると、「できなかった理由」を探さなくてはならなくなる。

 

司会:まあそうなりますよね。

 

けいちゃん:でも、「元々無理なもの」はどうやったって「無理」なんです。

そうなると、「元々無理だった」以外の「理由」を見出そうとすれば必然的に“陰謀論的なもの”にならざるを得ない。フレア団陰謀論的なのって、必然的なんです。

 

司会:なるほど。

 

けいちゃん:あとはきっと、「慈善事業をいくらやっても社会が良くならない」という徒労感が重要な役割を果たしたはず…

…しまった、このことテキストに書くの忘れていた…

 

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追記:後から考え直すと、「慈善事業の徒労感」が重要な役割を果たしたことについてはその通りだけど、そもそも「こっち」がスタートの可能性もあるかも。

 

いくら努力しても世界が“みにくく変わっていく”のに耐えられなくなって(ただ、後述にあるように、この考え方はそもそもが間違っている)

いつしか、いつまでもみにくく変わらないもの=「永遠の美しさ」なるものを希求(妄想)するようになった…という可能性もありそう。というか、エピローグのトロバが推測しているのがこれか。

 

けれど、本編にどちらが先だったかを決定する直接の描写はないので、結局本当のところはわからない。

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漂う陰謀論っぽさ

けいちゃん陰謀論って、私が思うにノリ(糊)みたいなものなんです。本来、くっつかないものをくっつけてしまうもの。

 

司会:それはどういうことなんでしょう?

 

けいちゃん:「結果」と「原因」を好き勝手にくっつけちゃえる、ってことです。「世界が良くならない」のは「悪い奴らがいるから」だ!みたい*2に。

 

 

けいちゃん:でもこれが問題なのは、世界はそういうふうにはできていないってことが抜け落ちている点なんです。

世界で生じる「結果」と「原因」って、ノリ(糊)でくっつくようなものではない。

これも詳しくは「テキスト版」で説明しているから、気になる人はチェック!

【ポケスペ考察】フラダリとは、フレア団とは何だったのか - けいのブログ

 

けいちゃん:で、フラダリの世界観って、ノリ(糊)っぽいんですよね。

われわれがどんなに与えたところで、

傷つき、生きる場所を奪われた人やポケモンがいなくなることはない。(XY編5巻、p145)

「われわれがどんなに与えた」ことと「傷つき、生きる場所を奪われた人やポケモンがいなくなることはない」ことは、こんな簡単には繋がっていないんです。

ここの“行間”には無限に等しい要素が存在していて、原理原則で言えば、それを全部「観測して」「証明しなければ」こうは言えないはずなんです。

 

司会:ラプラスの悪魔的ですね、これ。

 

けいちゃん:そうそう。で、ラプラスの悪魔って否定されている(らしい)から、この世界認識は間違っているんです。だから、

やはり与えるべき価値のある人間と、ない人間を選別せねばならない。(XY編5巻、p145)

なんて間違った結論が出てくるんです。

 

司会:なるほど。「前提そのもの」が間違っているから結論がおかしくなるんですね。

 

けいちゃん:そう。フラダリの抱えている最大の問題は、「問題の設定」「解決方法」のどちらでもなく、世界に対する認識そのものです。

だから、結局は「問題の設定」「解決方法」のどちらも間違うことになる。

 

 

「美しさ」に対する意識の変化

けいちゃん:このシーン、もう一つ重要なセリフがあって。

今、わたしたちを悩ませているものが一掃されたカロス。

美しいと思いませんか?(XY編5巻、p145-146)

 

司会:…あ!「美しさの定義」が変化していますね?

 

けいちゃん:そう!

  • 「変わらない若さ」=「美しさ」

だったフラダリの「美しさ」観が、

  • 「悩ませているもの(=われわれがどんなに与えたところで、傷つき、生きる場所を奪われた人やポケモンがいなくなることはない)がないカロス」=「美しさ」

に変わっているんです。

この2つの美しさは明らかに「異なるもの」です。

 

司会:本当ですね〜。で、ここまでの話から考えると、「ない」という否定形が出てくると「誤魔化し」ということだから…

 

けいちゃん:ハイ。「傷つき、生きる場所を奪われた人やポケモンがいないカロス」という「美しさ」もまた現実に存在しないし、存在できるわけはないんだけど、

フラダリにとってそれは存在するもの…というより、存在しないと都合の悪いものだから「詭弁」で証明(したフリを)してみせたんです。

 

 

けいちゃん:これが欺瞞である証拠に、これを聞いたクセロシキは“極めて正しく”「本当のメッセージ」を受け取っているんです。

価値ある人間と価値なき人間が同じ倫理観に従う必要はない。

そこに気づかせてくれたことがなによりものわたしへの援助だったんだゾ。(XY編5巻、p146)

「美しさ」の「う」の字も出ないこのモノローグは、すごく重要です。

 

なぜなら、この両者でなされた本当のやり取りは、

  • 暴力を振るう口実

の確認であるからです。

フラダリにとってそれは不可能を可能に見せかける「欺瞞(を現実のものにする)」のためであり、クセロシキにとってそれは「倫理を超えた研究への口実」です。

 

司会:…本当に嘘や誤魔化しばっかりですね…

 

けいちゃん:このシーン、フラダリがこのように「『他人の暗い欲望』をくすぐる天才」であることも示していて、めちゃくちゃ重要なんですよね。

ちなみにこの才能はファシストの必須条件です。

 

 

かくしてフレア団は動き出す

けいちゃん:こうして、フラダリの「変化」が見えてきました。

で、改めてですが、その変化が生じたのは「永遠の美しさ」という「不可能性」にぶつかったことと、

「慈善事業をいくらやっても社会が良くならない」という命題が持っている「間違い」ゆえだと思うんです。

 

司会:難儀な人生を生きていますね、フラダリ。

 

けいちゃん:で、この両者をまとめて超えるために、「美しくないものを取り除く」という“飛躍した”発想に至ったのが、フレア団の暗躍のスタートだと思うんです。

 

 

けいちゃん:前者は、「美しくないもの」を定義することで、存在しない「美しいもの」をあたかも存在するように見せかけられるため都合がよく、

後者は、そうした「問題解決」にはわかりやすさがあって、まやかしであっても説得力が宿るから(都合が良い)、だと思います。

 

司会:確かに、ある意味“優れた”一挙両得なアイデアですね、こうして見ると。大間違いではあるのですが。

 

 

けいちゃん:ハイ。で、この「アイデア」が何より優れていたのは、人々の「暗い欲望」を実にうまく満たしてくれた(/る)んです。

 

けいちゃん:例えば、ライボルトナイトを競い合った団員。彼はおそらくフレア団の「表の思想」に共鳴していたのではなく、「裏の思想」である「他者から資源を奪ってよい」「欲望のためには何かを破壊したって構わない」という方に共鳴していたんです。

彼もまた、「美」については一言も口にしませんでしたね。

 

司会:むしろ、芸術作品をお金の面でしか捉えていなかったですしね。

 

けいちゃん:あ、そういやそうですね!彼は不平等な社会に不満を抱いていることをいくつも口にしており、そのはけ口が欲しかっただけなんです、きっと。

で、フレア団は、そこに実に「高尚な目標」を与えてくれるんです。

 

 

計画は進められた

けいちゃん:そして、「美しくないもの」を一掃するために計画が立てられることとなったはずです。それは「最終破壊兵器」の起動というものでした。

 

司会:あれ、やばすぎる兵器ですよね。何かの暗示なんでしょうか?

 

けいちゃん:さぁ…とりあえずここで重要なのは、「やばい兵器があること」と「それを使いたがっている人がいる」ことです。

 

 

けいちゃん:「最終破壊兵器」の起動にあたって、必要な資源は人的・物的ともに膨大なものでした。

  • ゼルネアスという伝説のポケモンから得る「生体エネルギー」
  • ゼルネアスを発見、確保するための調査・計画にかかるコスト
  • ミアレを大停電に追い込むほどの電力
  • 実行するための組織運営
  • また、外部との協力体制
  • これらを円滑に進めるための情報統制…

…ぱっと思いつくだけでも、こんなにあります。これを合法にやることなど、まぁ不可能でしょう。

 

 

司会:こんな暗い情熱とか執念はどこから来るんでしょうね…他のことに使っておけば多少のことなら何だってできたでしょうに…

 

けいちゃんそのエネルギー使って絵とか描いとくべきでしたよね。もしくは、言葉を実にうまく悪用できるくらい言語センスがあるんだから、小説とか詩とか作詞とか…

 

 

けいちゃん:話を戻して、合法にできない以上、非合法な手段を取る必要が出てきます。そこで、人々の“暗い欲望”をくすぐる「裏の思想」と、「表の思想」が持つ巧みな「隠蔽ぶり」が活きてくるわけです。

こうして多数の人間を動員し、資源を調達し、「最終破壊兵器」の発動は秒読みとなることになったわけです。

 

 

姿を見せぬ共犯者たち

けいちゃん:結果については、この記事を読む人であればご存知でしょうからパスします。一つ言えるのは、あの結果はエックスたちの必死の活躍がなくしてはあり得なかったのは当然ですが、そもそも失敗が宿命づけられていたから、であると申しておきましょう。

 

 

司会:では、最後のテーマですね。フラダリとは、フレア団とは何だったのか、ということですが。

 

けいちゃん:雑に言うと、私はカロス地方という“システム”に起きた“エラー”」だと感じます。

フラダリ個人の資質が大きな影響を与えたのは当然だけど、だからと言って個人の問題だけに還元できるものではない。

 

けいちゃん:これも議論は詳しくは「テキスト版」でしているのだけれど、かいつまんで言えば

  • 大前提として、フレア団員および外部の協力者なくしてはこの計画は成し得なかった

と言う点が極めて重要であるということです。

【ポケスペ考察】フラダリとは、フレア団とは何だったのか - けいのブログ

 

司会:書いてありますね。

極端な話、仮にカロス中の人々がフラダリの言葉に耳を傾けなければフレア団の支配など成し得なかったはずである。

って。

 

けいちゃん:ハイ。だから、本当に怖いのは手を貸した奴らはフレア団壊滅後も何食わぬ顔で社会に溶け込んでいることなんです。

お前らが協力しなければフレア団はあんなことできなかったんだぞ。お前ら共犯者なんだぞ、わかってんのか、っていう。

 

司会:「その怖さ」はちゃんとラストシーンで示唆してあるんですよね。

 

けいちゃんすごいですよ、その視点をちゃんと盛り込んでくるところが。

「悪なるもの」の描写が極めて鋭いです。そんな重たいテーマをポケモンのコミカライズでやるのかっていう。そこにシビれる憧れるゥさすが俺たちのポケスペ

 

 

エックスとワイちゃんの必然性

けいちゃん:で、そこに関連してエックスとワイちゃんの設定の妙について喋らせてください。

ここまで見てきた「フラダリ」と「フレア団」の設定って、実は正直どこまでが「ゲームにもある設定(語られていない裏設定含む)」で、どこからが「ポケスペのアレンジ」かよくわかんないんですよ。

 

けいちゃん:だから、私は日下先生山本先生すごいって言ってきたけど、「原作の要素を忠実に描いた/大胆にアレンジした」のかで「すごい」の意味はある意味変わり得ますよね。

すごいこと自体に変わりはないんですけど。

 

司会:これは「アレンジ」を“最上のもの”と考えたら、っていうことですよね?ゼロからアイデアを作った、ということで。

 

けいちゃん:ハイ。でもだからって「原作の要素を忠実に描いた」が「アレンジ」に劣るなんてことにはならないですよね。だって、どんな素晴らしい物語の原作があったとしても、例えばそれを私に与えたって何も出てきませんから。

どんな作品も実際に描いた人あってこそであり、またそもそも、「素晴らしさを素晴らしさとして」表現できるかどうかも決して簡単な話じゃないですよ。

 

司会:そうですね。自分も絶対無理ですから。

 

 

けいちゃん:話を戻しますね。そんな中、確実に「ポケスペのアレンジ」と言える部分は主人公エックス、ワイちゃんの設定です。で、これがすごい

ある種、神がかっている。

 

けいちゃん:それが何かというと、ふたりはふたりとも「自分を裏切らない」キャラクターと設定されている点。

特にそれが強く表れているのは、エックスは「他者の感情に聡く」「感覚が鋭い」こと。

ワイちゃんは「ハッキリとした言葉、ハッキリとした態度」が信条であること。

これはどっちも「自分」というものを“ちゃんと”信じていないとできません。

 

司会:なるほど〜。ただ、言うは易く行うは難し、ですね。

 

けいちゃん:全くその通りで。で、またちょっとファシズムの話をしちゃうけど、ファシズムの本質とは「自己に対する裏切り」なんだそうです。だから、どれだけ嘘をついても、どれだけ人を傷つけても平気でいられる。

だから当然、ファシズムに対するアンチテーゼとは「自己を裏切らない」ことになるそうなんです。

くどいけど、その説明についてはこちら。

【ポケスペ考察】フラダリとは、フレア団とは何だったのか - けいのブログ

 

けいちゃん:前者はフラダリ、フレア団的であり、後者はエックス、ワイちゃん的である。つまり、XY編の敵・味方の構図ってはっきりとした必然性があるんです。

日下先生も山本先生もこうした設定を「パッと」やった、んだと思うんですけど、この視点の鋭さと正確さは本当にすごいことで。

 

 

けいちゃん:だからちょっと話が飛躍しちゃうけど、ポケスペという作品は本当にすごく信頼できるんです。小賢しく言うけど、ここに限らず、人間の「人間らしくいること」と「善なるもの」に尊敬と信頼を払い、「悪なるもの」を憎んでみせている。

子どもも大人も夢中になれるのは「ここがちゃんとしているから」だと思います!

 

 

メガシンカのあれ、言えますか?

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2022年4月20日追記:

その後、(ここに出てくる)友達に教えてもらったのですが、この箇所に関して重大な見落としがありました。

言葉の表面上の意味に囚われすぎていて、「コンテキスト」という、より重要な問題に気付いていませんでした。

 

よって、ここ、撤回します。

けれど、「コンテキスト」を見落とすとどうなるのか、という実例(戒め)として残してはおきます。

 

ちなみに、それに対する仮説もその友達と検討したのですが、もしそうだとしたら、本当にポケスペはすごい。

そして、それはものすごい皮肉であり、ブラックジョーク的。

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けいちゃん:あ、そうそう!メガシンカを管理する一族に伝わる「あれ」、ちゃんと言えますか?

 

司会:ええっ?自信ないなあ…確か、

「言行に恥じるところなく」、「しせい(?)になんたら」…、

…あと一個なんでしたっけ?

 

けいちゃん:完全にメガシンカ使い失格ですね〜。今まで散々ゲームでメガシンカ使っているだろうに…コンコンブル師匠キレますよ。

 

司会:ムッ。じゃあ言ってみてくださいよ。

 

けいちゃん忘れました。すみません、人のこと言えませんでした。

 

司会:じゃあ確認しましょうか。で、一緒に怒られましょうね

えーっと、

至誠にもとることなく、

言行に恥じるとこなく、

気力に欠くることなく…、(60巻、p48)

ですね。

 

けいちゃん:これ、辞書引きながら確認してみましょう。多分、かなり重要なことを言っているはず。

至誠:きわめて誠実なこと。また、その心。まごころ。「−の人」

 

もとる(悖る/戻る):

  1. 道理にそむく。反する。「人の道に−・る。」
  2. ねじり曲がる。ゆがむ。また、ゆがめる。「故(ことさら)に己が口を−・りて」<霊異記・中>

 

言行:言葉と行い。口で言うことと実際に行うこと。「−が一致しない」

 

気力:何かを行おうとする精神力。気持ちの張り。「−が充実している」「−に乏しい」(ここまで、引用は全てgoo辞書より)

 

けいちゃん:ちなみに「欠くる」だけは出てこなかったんだけど、用例集ってのが見つかって、そこから考えるに「欠ける」と同義でいいと思います。

 

司会:ここから考えるに、意味としては

  • 誠実さ(/な心)に背くことなく、
  • 言葉と行いの両方を恥ずかしくないものにし、
  • それらを行う精神力に満ちていよ

ってことなんですかね。コンコンブルの発言と照らしてみると

真心に反することなく、

言葉に出したことは実行し、

心の強さ…気持ちの強さは十分である。

そんな意味だ。(58巻、p42)

あれっ?最初以外ちょっと違いますね?

 

けいちゃん:ホントだ。でも、私はどっちでもしっくりきますね。というか、二つを混ぜたらもっとよくなる気がする。

  • 真心に反することなく

これはどっちでもほぼ変わらない。で、次もコンコンブル師匠を採用しつつ、少し手を加えて

  • 言葉と行いを一致させよ

としたいなぁ。「至誠にもとることなく」ともこれで一致しますし。

 

けいちゃん:最後はコンコンブル師匠のだとちょっと前2つと分離しちゃっている感じがあるので、

  • それを支えるのは満ちた心である

と読むのがよいと思います!

 

 

けいちゃん:こうして、

至誠にもとることなく、

言行に恥じるとこなく、

気力に欠くることなく…、(60巻、p48)

  • 真心に反することなく
  • (その真心から来る)言葉と行いは一致させ、
  • それを支えるのは満ちた心である

と解釈されることとなりました!

 

 

司会:すごい。こうやって覚えたら覚えられそう

 

けいちゃん:ハイ。そして、やっぱり大切なこと言ってましたね。これ全部、フラダリなるもの、フレア団なるものへのアンチテーゼです。

 

 

けいちゃん:余談ながら、この「言い伝え」って、私かつて友達と議論した時に、

メガシンカって「絆」とかぬかしてるくせに捕まえたばかりのポケモンでもできるし、トレーナーの一存で無理矢理にでも進化させられる「一方的で支配的なシステム」だから、それに対する強い戒めなのでは、って話になったことがあるんです。

 

けいちゃん:もちろんそれもあるだろうけれど、他にもXY編の構造自体に影響を持ち得るテーマであることが、こうしてわかりました!

 

 

まとめ

司会:今回ははっきり言って難しいテーマでしたね。

 

けいちゃん:本当ですよ。私、テキスト書いてこうして議論してたら、その後3日間ぐらい「無」になっていましたもん。ブログから離れて、頭空っぽにして作業ゲーしてた

 

 

けいちゃん:でも、まじでこれ大事な話ですからね、言っておきますけど。

だからといって、別にちゃんと理解する必要があるなんて言いません*3し、そもそも私だってちゃんと理解しているとはとても言えない。入り口のあたりでちょこちょこやったに過ぎない。

 

けいちゃん:とは言え、

www.youtube.com

こうした“イメージ戦略”に「とんでもない怖さ」が潜んでいることを感じられるようになっておいたら、危機に対するセンサーになるかもしれないよ、ってことです。

 

司会:これ、単純に笑ってしまうんですけど、それではまずいんですかね…

 

けいちゃんいいでしょ。創作物の意味ってそこだし。

それは、一歩引いた目線で見ると、いかにこうしたものが“滑稽”かってことを表しているんですよ。フィクションは、そうやって暗に現実を告発することができるんだよ、って私は思っています。

 

 

司会:というわけで、今回はフラダリとフレア団についてでした。そこから、主人公たちやメガシンカの話まですることができました。

 

けいちゃん:ここまで読んでいただいたガッツのある人には、ぜひテキスト版も読んでほしいなぁ。いつもとは違い、このテーマは両者合わさってひとつの議論でもあるので。

 

 

司会:次回は、どうしましょうか?

 

けいちゃん:うーん、2月はXY編強化月間なので本当はパキラ行こうと思っていたんですけど、こうした話をするとすごい疲れることがわかったから、気の向くままにかなぁ…

 

司会:わかりました。では、次回は読んでのお楽しみということで。

 

けいちゃん:ありがとうございました。ちなみに、先行予告をしておくと、XY編シリーズの大トリはマチエールの予定です!

それでは、ばいばーい!

 

 

 

 

おまけ:放送事故

司会:今回の“収録”をするにあたり、冒頭で放送事故が発生したんです。完全に話と関係ないので収録は見送ったのですが、おまけとして残しておきます。

 

 

 

 

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けいちゃん:こんにちは。まずはこのテキストを読んでください。

keypksp.hatenablog.com

 

(手渡す)

 

司会:いきなり何ですかこのパターンは?新しいですね?

 

けいちゃん:いや、今までは「議論 → テキスト」って編集していたじゃないですか。でも、今回のテーマはかなり難しくて、まず喋るために私が考えをまとめておく必要があったんです。

 

けいちゃん:そしたら「テキスト版」の方が先にまとまってしまうという、いつもの順番と逆なことになっちゃって。

なので、今回はこの「テキスト」を元に進めたいと思います。

 

けいちゃん:ただ、読者の方は別にこの議論編を読むにあたっては「テキスト版」は読まなくたって大丈夫ですよ!

 

 

司会:なるほど。では…

 

(読み始める)

 

司会:…うわっ、長ッ!?しかも文章固すぎるし、読ませる気あるんですか、これ?

 

けいちゃんありますよ?私、記事を書くときに心掛けていることがあって。

 

司会:なんでしょう?

 

けいちゃんポケスペに復帰する際に、色々情報サイトとか考察サイト読んだんですよ。

で、ブログ始める際に思ったんです。私のブログには

「その時の私」が読んでいたら確実に(悪)影響を受けるような記事を作りたいなぁって。

 

けいちゃん:つまり、いるであろう「将来の私」に向けて。ふふふ…

 

 

司会:(悪)って付いてるじゃないですか…

 

けいちゃん:だって、そっちの方がお得でしょ?

 

司会:…じゃあ、このテキスト(の長さ)も?

 

けいちゃん:ハイ。ここまで説明しておいたら「将来の私」は楽しんでくれるだろうなって。

そう、今読んでいるそこのあなただよ!

 

司会:(笑)そういうの、やめなさいって…

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けいちゃん:こんなモチベーションでブログを書いています。ぜひ、これからもご贔屓に。

 

 

 

 

*1:だからといって、フレア団の行いを過小評価することにも、免罪することにもならないのは当たり前のことである

*2:もちろん、実際の陰謀論はもっと“手が込んで”いる

*3:そういう押し付けが持つ暴力性がフレア団を生み出すんだよっ